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横浜地方裁判所 平成4年(ワ)1758号 判決

主文

一  被告は、原告長谷川清に対し一三四七万六九三六円、原告長谷川正枝に対し一一九〇万一九三六円及び右各金員に対する平成二年五月三〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告らのその余の請求をいずれも棄却する。

三  訴訟費用は、これを五分し、その三を被告の負担とし、その余を原告らの負担とする。

四  この判決の主文一は、仮に執行することができる。

事実

一  当事者の求めた裁判

1  原告ら

(一)  被告は、原告長谷川清に対し四〇五四万六二一六円、原告長谷川正枝に対し二七九一万三六一九円及び右各金員に対する平成二年五月三〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

(二)  訴訟費用は被告の負担とする。

(三)  仮執行宣言

2  被告

(一)  原告らの請求をいずれも棄却する。

(二)  訴訟費用は原告らの負担とする。

二  当事者の主張

1  請求原因

(一)  交通事故の発生(以下「本件事故」という。)

(1) 概要

日時 平成二年五月三〇日午後九時二五分ころ

場所 神奈川県茅ケ崎市中島一一八一番地先道路上(以下「本件事故現場」という。)

加害車 普通乗用自動車(相模五三て五六九四)

右運転者 被告

事故の態様 神奈川県地方主要道四一号線を国道一号線方面から国道一三四号線方面に向かつて進行中の加害車が、本件事故現場において、同所を加害車進行右側から左側に横断歩行していた亡長谷川和代(以下「被害者」という。)に衝突

(2) なお、事故発生状況の詳細は次のとおりである。

〈1〉 本件事故現場付近は、自動車法定走行速度時速四〇キロメートル、道路中央に幅二メートルの中央分離帯のある片側一車線の幅員三・二メートルで、横断歩行禁止のない道路である。また、本件事故現場に至る道路は、JR東海道線のガードをくぐる地下道を上がる状態になつており、地下道を上がつて約一三四・五メートル前方に本件事故現場付近を目撃することができる。本件事故当時、事故現場手前約三〇メートルで、加害車が地下道上り坂を走行して約五五メートル前方の進行方向左側には積載重量一〇トンの大型トラツクが駐車中であつたが、加害車進行方向右側には駐車中の自動車など右車線の視界を妨げる物体は何もなく、本件事故現場付近右側は大森ストアの店舗の照明で人や物体の存在を十分確認できる状況であつた。

〈2〉 被告は、地下道の上り坂によつて前方の視界が悪い道路状態を走行するのであるから、地下道上り坂付近では徐行し、かつ、約五五メートル前方左側に前記大型トラツクが確認できた地点では、左右前方の歩行者と車両を十分確認しながら走行すべき安全運転義務があつた。しかるに、被告はこれを怠り、時速五〇キロメートル以上の速度で前記中央分離帯内を走行して前記大型トラツクを追い越して左側車線にハンドルを切つて進入し、被害者が既に右側から横断して左車線側歩道約一メートル手前付近まで歩行してきていたのに気づかず、加害車左前部を同人に衝突させた。

(二)  責任原因

被告は、本件事故当時、加害車を自己のために運行の用に供していた者であるから、自動車損害賠償保障法(以下「自賠法」という。)三条本文に基づき、被害者及び原告らが本件事故により被つた後記損害を賠償すべき義務がある。

(三)  損害

(1) 被害者の死傷

被害者は、本件事故により頭部陥没骨折、広範囲脳挫傷の傷害を負い、事故当日である平成二年五月三〇日午後一一時三四分茅ケ崎徳洲会病院において死亡した。

(2) 被害者の損害 合計六一五二万六五三八円

〈1〉 逸失利益 五一五二万六五三八円

被害者は、本件事故当時一九歳(昭和四六年二月二六日生)で成城短期大学二年生の女子であつたから、その逸失利益は、賃金センサス平成二年第一巻第一表年収額による女子高専・短大卒全年齢平均年収額三〇五万一〇〇〇円に一九歳の新ホフマン係数二四・一二六三を乗じて、生活費としてその三〇パーセントを控除した右金額である。

〈2〉 慰藉料 一〇〇〇万円

被害者は、前記のように短期大学二年生で、翌春には卒業して社会人となる前途に大きな希望をもち、本件事故当時就職活動の最中であり、事故当日も就職活動のために友人達と先輩を訪ねていたのであつた。それだけに本件事故によつて生涯を無にされたことの無念さは言語に絶するものがある。かつ、本件事故による受傷も頭部陥没骨折、広範囲脳挫傷であり、死に至るまでの二時間余りの苦しみもまた耐え難いものであつた。その慰藉料は右金額が相当である。

(3) 原告長谷川清の損害 合計二二二八万二〇九七円

〈1〉 葬儀関係費用 八〇九万八五八二円

被害者の葬儀等を営むため、原告長谷川清は右金額の支出を余儀なくされた。(内訳は、別紙一のとおりである。)

〈2〉 交通費等 三六四万七〇一五円

被害者の本件事故による死亡に伴い、原告長谷川清は、交通費その他諸雑費として右金額の支出を余儀なくされた。(内訳は、別紙二のとおりである。)

〈3〉 慰藉料 八〇〇万円

原告長谷川清は、被害者をことのほか可愛がつて養育してきたもので、同人の不慮の死は、精神的・肉体的に耐え難い試練となり、医師の診療を受けることもしばしばという状況にまでなつた。その精神的苦痛は筆舌に尽くし難いものがある。これに対する慰藉料は右金額が相当である。

〈4〉 弁護士費用 二五三万六五〇〇円

原告らは本件損害賠償請求を訴訟外で解決しようと加害者側と協議してきたが、加害者側が過大な過失相殺を主張したため、やむなく本件訴訟の提起・遂行を原告ら訴訟代理人に委任して、原告長谷川清は弁護士費用として着手金一〇〇万円を支払い、さらに、判決等の認容額に応じて日本弁護士連合会弁護士報酬等基準規程に基づく成功報酬を支払うことを約した。この成功報酬額は、全部認容の場合、一五三万六五〇〇円である。

(4) 原告長谷川正枝の損害 合計九六五万一五〇〇円

〈1〉 慰藉料 八〇〇万円

原告長谷川正枝は、被害者の不慮の死による精神的シヨツクから心身不全の状態となり、生活意欲も低下し、毎日毎夜泣き明かす日々が続いた。医師の診察を受けたり、床に伏す状態が数か月も続いた。かかる精神的苦痛に対する慰藉料は右金額が相当である。

〈2〉 弁護士費用 一六五万一五〇〇円

原告長谷川清についてと同様、原告長谷川正枝は原告ら訴訟代理人に着手金として五〇万円を支払い、さらに成功報酬を支払うことを約した。この成功報酬額は、全部認容の場合、一一五万一五〇〇円となる。

(四)  相続

被害者は原告らの子であり、原告らは(三)(2)の被害者の損害に係る被告に対する損害賠償請求権を各二分の一(三〇七六万三二六九円)の割合で相続した。

(五)  損害のてん補

原告らは、本件事故による損害について、自賠責保険から二五〇〇万二三〇〇円の支払を受けたので、各二分の一(一二五〇万一一五〇円)ずつ取得することとし、被害者の前記逸失利益分の一部弁済として充当した。

(六)  よつて、被告に対し、本件事故に基づく損害賠償として、原告長谷川清は四〇五四万六二一六円、原告長谷川正枝は二七九一万三六一九円、及び右各金員に対する本件事故発生の日である平成二年五月三〇日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

2  請求原因に対する答弁

(一)  請求原因(一)は、(1)については認める。(2)については、〈1〉は、「加害車進行方向右側には駐車中の自動車など右車線の視界を妨げる物体は何もなく」との点、及び、「大森ストアの店舗の照明で人や物体の存在を十分確認できる状況であつた」との点は否認し、その余は認める。〈2〉は、加害車が被害者に衝突したことは認め、その余は否認する。

(二)  同(二)は認める。

(三)  同(三)は、(1)と、(2)のうちの被害者の生年月日は認め、その余は不知。

(四)  同(四)は、被害者が原告らの子であることは認め、その余は不知。

(五)  同(五)は不知。

3  抗弁(過失相殺)

本件事故当時、事故現場付近には、加害車進行方向に向かつて左側車線に大型トレーラーを挟んで前後に普通自動車各一台が駐車しており、右側車線に大森ストアの出入口付近に普通自動車一台が駐車していた。そのため、被告は、加害車を道路中央線に沿うように運転せざるを得なかつたが、事故現場にさしかかる直前に前方を注視したところ、大森ストアの照明などで部分的には明るかつたものの、左側車線上に右三台の車両が駐車しており、左側歩道及び右各車両の間は逆に薄暗く感じられたため、進行方向の左側からの人の飛び出し等があるかもしれないと注意しながら加害車を運転していた。

被告は、加害車が大型トレーラーの後尾付近にさしかかつた際、本件事故現場付近を、進行方向右側から左側に男の人が横断しているのを確認し、同人が大型トレーラーの前部からさらに左側に進行したのを見届け、同所付近を逆に左側から進行してくる人がいないかと注視しつつ前方を確認したところ、右横断者の後を追うような恰好で被害者が右車線側から左車線側に向けて小走りに出てくるのを目撃した。加害車は既に道路中央線上を走行していたが、被害者は、加害車を確認しながら、道路中央線付近で立ち止まり、加害車が進行してくるのをそのまま見詰めていた。被告は、被害者がそのまま横断を終えてくれるものと思つていたところ、同人が立ち止まつてしまつたため、慌ててハンドルを右に切りつつブレーキをかけ始めたが間に合わず、加害車左前部を同人にぶつけてしまい、本件事故となつた。これを要するに、被告は、進行方向右側に比して左側が暗く感じたため、左側方面により注意を払つており、進行方向正面を第一横断者が歩行しているのを認めたとき、大森ストア付近が明るかつたので他の横断者がいないものと判断したことから被害者の発見が遅れ、かつ同人が中央線付近で立ち止まつてしまつたために本件事故に至つたのである。

したがつて、第二横断者である被害者が加害車を認めた段階で道路横断を思い止まるか、第一横断者に引き続いて横断を終えてしまえば本件事故は起こらなかつた。また、被害者が道路中央付近で立ち止まつた際に、被告が大きく右にハンドルを切ることができればあるいは事故を回避し得たかもしれないが、事故現場のすぐ先の右側には車両が一台駐車しており、ハンドルを右に切り過ぎれば加害車が右駐車車両に衝突し、被告自身の生命を危険にさらさせてしまうことになる。被告としては、できる限りの事故回避行動をとつたものである。

以上によれば、仮に、本件事故について被告に過失があり、原告らに対する損害賠償義務があるとしても、被害者にも通行量の多い夜間の道路を不注意に横断した過失があると思料するので、二〇パーセントの過失相殺を主張する。

4  抗弁に対する答弁

争う。

三  証拠関係

記録中の書証目録・証人等目録のとおりである。

理由

一  請求原因(一)(1)及び(二)は当事者間に争いがない。したがつて、被告は、自賠法三条本文に基づき、被害者及び原告らが本件事故により被つた後記損害を賠償すべき義務がある。

二  損害

1  請求原因(三)(1)は当事者間に争いがない。

2  被害者の損害

(一)  逸失利益 三八六〇万七二六二円

成立に争いのない甲第一号証の三の七、同号証の三の一二、第九号証、第一〇号証、原告長谷川正枝本人尋問の結果により成立を認める甲第一号証の三の一一、原告ら各本人尋問の結果及び弁論の全趣旨によると、被害者は、本件事故当時一九歳(昭和四六年二月二六日生―この生年月日については当事者間に争いがない。)で、成城短期大学二年在学中の健康な女子であり、卒業後は就職して働くことを希望していたことが認められる。したがつて、被害者は、六七歳までの四八年間につき少なくとも賃金センサス平成二年第一巻第一表年収額による女子高専・短大卒全年齢平均年収額三〇五万一〇〇〇円の収入を得ることができたものと推認され、生活費を右年収額の三〇パーセントとしてライプニツツ方式(係数一八・〇七七一)により年五分の中間利息を控除して被害者の本件事故時の逸失利益の現価を算定すると、三八六〇万七二六二円(円未満切捨て)となる。

(二)  慰藉料 一〇〇〇万円

右(一)認定の事情と後記認定の本件事故の態様その他本件に現れた一切の事実を斟酌すると、本件事故による被害者の精神的苦痛に対する慰藉料は一〇〇〇万円をもつて相当と認める。

3  原告長谷川清の損害

(一)  葬儀関係費用 一二〇万円

原告長谷川清本人尋問の結果により成立を認める甲第四号証の一ないし一八、成立に争いのない甲第六号証の一ないし五三及び弁論の全趣旨によると、原告長谷川清は、平成二年五月三一日から平成四年五月八日までの間に、被害者の通夜、告別式、法要等とそれに伴う種々の出捐、新たな仏壇・仏具の購入、墓碑の建立などのために、同原告の計算では総額八〇九万八五八二円を支払つたことが認められるところ、前記認定の被害者の年齢その他諸般の事情を考慮すると、本件事故と相当因果関係のある葬儀関係費用としては、一二〇万円をもつて相当と認める。

(二)  交通費等 三〇万円

原告長谷川清は被害者の本件事故による死亡に伴い交通費その他の諸雑費として三六四万七〇一五円の支出を余儀なくされた旨主張し、前掲甲第四号証の一ないし一八、成立に争いのない甲第七号証の一ないし一〇、同原告本人尋問の結果により成立を認める甲第五号証及び弁論の全趣旨によると、同原告が被害者に本件事故による死亡に関連して相当額の出捐をしたことが窺われるけれども、本件事故との関係が必ずしも明らかとはいえないものも多く、葬儀関係費用のほかに交通費その他の諸雑費として本件事故と相当因果関係のあるものは、右のうち三〇万円をもつて相当と認める。

(三)  慰藉料 三五〇万円

本件に現れた一切の事情を斟酌すると、本件事故による原告長谷川清の精神的苦痛に対する慰藉料は三五〇万円をもつて相当と認める。

4  原告長谷川正枝の損害

慰藉料 三五〇万円

本件に現れた一切の事情を斟酌すると、本件事故による原告長谷川正枝の精神的苦痛に対する慰藉料は三五〇万円をもつて相当と認める。

三  相続

被害者が原告らの子であることは当事者間に争いがないから、原告らはそれぞれ前記認定の被害者の被告に対する損害賠償請求権を二分の一の割合で相続したものと認められる。したがつて、原告ら各自の請求額は、原告らの損害に係るものを含めて、原告長谷川清は二九三〇万三六三一円、原告長谷川正枝は二七八〇万三六三一円となる。

四  抗弁について

1  成立に争いのない甲第一号証の三の四ないし七、同九、一〇、一四、第二号証の一二、原告長谷川清及び被告各本人尋問の結果並びに弁論の全趣旨を総合すると、次の事実を認めることができる。この認定を左右するに足りる的確な証拠はない。

(一)  本件事故現場は、南方国道一三四号線方面から北方国道一号線方面に南北に通じる主要地方道四一号線上で、アスフアルト舗装された、歩車道の区別のある平坦な直線道路であり、見通しは良く、沿道東側は耕作地(畑)、西側は「大森ストア」というスーパーや民家が点在している。道路中央には幅約二メートルで黄色の実線による中央線が引かれ、道路両側の歩道の側端には白色実線による外側線が設けられている。歩道を含めた道路全体は幅員約一六メートル、外側線から中央線までの各車道部分(一車線)は約三メートルである。交通規制は、最高速度四〇キロメートル毎時と指定され、両側とも駐車禁止となつているが、歩行者横断禁止場所とはされていない。

(二)  被告は、加害車を運転し、前照灯を下向きにした状態で北方から南方に向けて時速約六〇キロメートルで事故現場付近にさしかかつた際、進路前方約三八メートルの左側端に車両が駐車しているのを認めて時速約五〇キロメートル程度に減速しつつ右に寄り、中央線上に進路を変えたところ、右車両の前方にさらに幌付きの大型トラツクが止まつていたことなどから、駐車車両付近からの横断者の有無などの確認にのみ心を奪われ、道路右側部分に対する注視を怠つた状態で加害車を進行させた結果、進行方向中央線付近を右から左に向けて小走りで横断しようとしている被害者を至近距離(約一三メートル)に至つて初めて発見し(同時に、その少し前方を小走りで右から左に横断中の男性も認めた。)、ハンドルを右に切り、ブレーキをかけたが間に合わず、被害者に加害車の左前部を衝突させ、同人を約五メートル跳ね飛ばした。

(三)  被害者は、友人運転の車に同乗して一日ドライブなどを楽しんで帰宅する途中、洗面所を利用するため一人だけ降りて前記「大森ストア」に寄り、右の車に戻るべく道路を横断しようとして本件事故に遭つたものであるが(なお、右の車は、被害者が降りるまでは前記四一号線を南方から北方に向けて走行していた。被害者が同車を降りたのも「大森ストア」側、すなわち加害車の対向車線側である。同車は、被害者が降りた後、進路を変える気を起こした運転者によつて、被害者が降りたときとは反対側、すなわち加害車の進行車線側に回されていた。)、当時、夜間ではあつたが「大森ストア」付近の本件道路上からその北方への見通しは良く、北方から進行してくる車両の有無を確認するのに妨げとなるものはなかつた。

2  右認定の事実によれば、本件事故の発生については、被告が自動車運転者としての基本的注意義務である前方注視義務を怠つたことに主たる原因があるというべきことは明らかであるが、一方、被害者においても、本件道路の横断を開始するに当たつて、左方から進行してくる車両の有無の確認ないしはその速度に関する判断において必ずしも十全ではなかつた面があるといわざるを得ず、それが本件事故発生の一因をなしていることを否定するのは困難である。通常の注意をもつてすれば、被害者は、横断開始の際に、左方から加害車が進行してくるのを確認し、危険なく横断できるか否かについて適切な判断ができたはずである。右の確認後加害車が急にスピードを上げたというような事情も存しない。このような事情に照らすならば、本件事故の発生については被害者にも過失があり、その割合は一五パーセントと認めるのが相当である。したがつて、本件事故による被害者及び原告らの損害については右の割合で過失相殺するのが相当であり、その限度で被告の抗弁は理由がある。

五  過失相殺後の損害額

前記三認定の原告ら各請求額について過失相殺をすると、原告長谷川清については二四九〇万八〇八六円(円未満切捨て)、原告長谷川正枝については二三六三万三〇八六円(円未満切捨て)となる。

六  弁護士費用

原告長谷川清本人尋問の結果により成立を認める甲第八号証及び弁論の全趣旨によれば、原告らは本件訴訟の提起・遂行を原告ら訴訟代理人に委任し、着手金として、原告長谷川清は一〇〇万円、原告長谷川正枝は五〇万円をそれぞれ支払い、成功報酬として、請求全部認容の場合には、原告長谷川清は一五三万六五〇〇円、原告長谷川正枝は一一五万一五〇〇円をそれぞれ支払うことを約したことが認められるところ、本件事案の性質、審理の経過、認容額等に鑑みると、原告らが本件事故と相当因果関係のある損害として被告に対して賠償を求め得る弁護士費用の額は、原告長谷川清については一〇七万円、原告長谷川正枝については七七万円が相当である。

七  損害のてん補

原告らが本件事故による損害について自賠責保険から二五〇〇万二三〇〇円の支払を受け、各二分の一(一二五〇万一一五〇円)ずつ取得して、被害者の逸失利益分の一部弁済として充当したことは原告らの自陳するところであるから、原告らの各損害額からこれを差し引くのが相当である。

八  よつて、原告らの本訴請求は、原告長谷川清については一三四七万六九三六円、原告長谷川正枝については一一九〇万一九三六円及び右各金員に対する本件事故発生日である平成二年五月三〇日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の各支払を求める限度で理由があるからこれを認容し、その余は失当であるからいずれも棄却し、民事訴訟法八九条、九二条、九三条、一九六条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 根本眞)

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